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人生のエネルギーカーブ

「うわ、器ちっさ!」と思われている人に足りない2つの要素

藤原和博:教育改革実践家 キャリア・スキルニュースな本

2024.6.28 8:00

ビジネスパーソン
写真はイメージです Photo:PIXTA

「人生は山あり谷あり」という言葉があるが、人生の折り返し地点を迎えた時、“谷”を恐れて現状維持に徹するのは、果たして得策と言えるだろうか?リクルートの初代フェローの人生曲線(エネルギーカーブ)を例に、リスクを取ってリターンを得る意義を学ぼう。本稿は、藤原和博『どう生きる?――人生戦略としての「場所取り」の教科書』(祥伝社)の一部を抜粋・編集したものです。

リスクに挑めばリターンが得られる 入射角・反射角の法則

 私のライブ講演会では時々、参加者に図を描いてもらうことがあります。

 それが「人生のエネルギーカーブ」です。

 みなさんもこれまで人生を生きてきて、さまざまな紆余曲折があったでしょう。

 いい思い出、あまり思い出したくない体験、人生の転機になった出来事などなど。その時々で、みなさんの“人生のエネルギー”は上がったり、下がったりしたと思います。それを図にするのです。

 横軸は人生の歩み(ライフサイクル)、縦軸はエネルギーレベルを示します。左下を0歳、すなわちスタートとすると、みなさんは、どのような曲線を描くでしょうか。

図1:藤原和博のエネルギーカーブ
同書より 拡大画像表示

 図1は、私の人生のエネルギーカーブです。小学校で盛り上がり、高校で盛り上がり、リクルート入社で盛り上がり、和田中学校の校長就任で盛り上がっています。

 いっぽうで、「谷」もあります。

 中学校でドーンと下がり、大学でどん底の五月病を味わいます。就職して一転、上昇カーブを描いたと思ったら、30歳でメニエール病を発症しました。出世するわ、年収は上がるわ、部下は300人に増えるわ、と順風満帆に階段を上っていたら、いきなり目が回ってダウンしたわけです。

 よく見ると、人生のエネルギーカーブが上昇する前には、必ず谷があることがわかります。マイナスはのちに反転して、プラスに作用しています。もっと言えば、直前の谷が深いほど山は高くなる。

 私はこれを「入射角・反射角の法則」と呼んでいます。

 入射角の角度が急であればあるほど、反射角の角度も急になる。思い切り沈んだあとは、思い切り跳ね返ってリターンが得られるのです。

 ですから、大きなリターンを得たければ大きなリスクに挑みましょう。

 たとえば、ベンチャー企業に入社するのはリスクですが、猛烈に働く機会を得られ、大きく成長できるかもしれない。上場しストックオプションを得られれば、大きな財産を築けるかもしれない。

 私のこれまでの人生を振り返ると、何度も辛い目にも遭いましたが、いい思いもたくさんしました。いや、遠慮なく言えば、とびきりのいい思い出でした。

 マイナス(谷)を恐れていたら、プラス(山)もありません。

 できれば谷を味わいたくないかもしれませんが、山を登り続ける、すなわち上昇だけが続く人生なんてありえないことは、ちょっと考えればわかることです。

 その意味で、私にとってもっとも悲しい人生は、谷もなければ山もない人生です。たとえ谷が少なくても、山も低いなら面白くない。

 大きな山に登りたければ、大きな谷も経験していい。しんどいけれど、自分を鍛えてくれる機会でもあります。人間の器を大きくしてくれる貴重なチャンスなのです。

 年齢を経るにしたがって、山に登らなくていいから、谷を避けたい。現状維持でいい。そう考える人もいるかもしれません。しかし、谷を恐れて何もしないでいるうちに、成長の機会を失ってズルズルとカーブが下り坂を描き、土俵際まで追い詰められてしまうなんてことも。まるで今の日本の姿のようです。

 個人も同じ。

 谷がないと思い込んでいたら、実は人生そのものが液状化していたということが起こり得るのです。

相手を惹きつける「谷」と「転」

 人生はクレジットゲーム。私はそう考えています。

 クレジットとは信用、すなわち他者からの信任の総量です。他者からの信任とは、信頼と共感の関数です。

 たとえば、業績を上げた、新規事業を立ち上げた。これらは相手の信頼につながります。あなたにとっての「山」です。いっぽう、共感は「山」ではなく「谷」です。挫折、失敗、病気などなど。マイナスモードのほうが、相手からの共感度が高い。

 人生が1冊の本だったとして、読み手はどこで感動するでしょうか。

「山」である成功体験や自慢話よりも、失敗や挫折や病気などの「谷」や、そこからの生還など「転」の部分でしょう。もっと言えば、谷があるからこそ、あるいは深いからこそ、山が輝いて見えるし、感動を呼ぶのです。

 これは、映画も同様です。たとえば『スター・ウォーズ』では、主人公ルーク・スカイウォーカーはハン・ソロと出会ったり、C-3POと出会ったり、賢者ヨーダと出会ったりします。そして、いろんなことを学びますが、挫折や失敗が待っている。ダース・ベイダーも出てくるし、事件も起こる。そして最後には、レイア姫を連れて故郷に帰ってくる。

「谷」や「転」があるから、多くの人に支持されるのです。

 自分の「場所取り」を考える時にも、谷は大いに影響します。

 谷は資産になるからです。それは、人生後半に間違いなく生きてきます。

 あなたには、人生前半で語るに足る失敗や挫折はあるでしょうか。それはどのようなことだったか、具体的に深掘りしてみてください。たぶん、それらはあなたにとって、周囲からの共感を集め、信任を育む大きな材料になります。

 もし「谷があまりなかったな」という人は、今からでも失敗や挫折をしたほうがいい。

 失敗や挫折を恐れてはいけません。何より、あなたの人間としての器を間違いなく大きくしてくれるからです。

信用される 当たり前の10カ条

 では信用される人とは具体的にどういう人か。まずは8つ挙げますね。

(1)挨拶ができる

(2)約束を守る

(3)古いものを大事に使う

(4)人の話が聴ける

(5)筋が通っている

(6)先を読んで行動する

(7)他人の身になって考える

(8)気持ちや考えを表現できる

 当たり前のことばかりです。

 でも、この当たり前のことができている人はけっこう少ないもの。あるいは、ある時は他人の身になって考えたけど、別の時は考慮しなかった。つまりバラツキがある。こういうムラが大きい人はあまり信用されません。

 逆に言えば、これらをきちんと守れば自ずと信用(クレジット)が醸成されていきます。

 ところで、なぜ先に8つを提示したのでしょうか。

『どう生きる?――人生戦略としての「場所取り」の教科書』(祥伝社)
藤原和博 著

 こうした10カ条を作る時、項目を12個作り、2つ減らして10個にする方法もあります。

 しかし、それでは多くの人が納得するものにならないと私は考えます。10カ条なら100個くらい挙げて、そこから減らすくらいでないと、説得力がないでしょう。

 しかし、今回は違います。残り2つは、逆に「信用できない人の10カ条」を考えて、そこから導き出しました。それが次の2つです。

(9)潔さがある

(10)感謝と畏れの感覚がある

 この2つは、先の8つよりも難しいかもしれません。でも、この2つができるようになると、人間の器は大きくなります。