「部下に任せるより自分がやった方が早い」→専門家のアドバイスが的確すぎた〈2024会員ベスト10〉
岡本文宏:メンタルチャージISC研究所代表取締役 マネジメントDOLベスト記事アワード
2024.12.20 8:00
写真はイメージです Photo:PIXTA
世の中の上司、経営者の多くは、部下に仕事を任せることが苦手です。仕事を任せるには部下の教育をしなければなりませんが、上司は自らのノルマをこなすことも課せられており、余裕がない場合も多いでしょう。しかし、そうした職場では部下は成功体験による成長を実感しにくく、離職のリスクも高まります。今回は、できるだけ時間を使わずに、安心して仕事を任せる方法をご紹介します。(メンタルチャージISC研究所代表取締役 岡本文宏)
仕事を任せることが苦手な上司が多い理由
任せることで、部下のやる気と定着率が同時に上がります。なぜなら、重要な業務を任せられた部下は、「自分は上司、会社から頼りにされている」「期待されている」と思えるからです。
そして、任せられた業務をしっかり完了させることができれば成功体験が増え、自信が持てるようになりますし、そうした自分を振り返ることで、成長を感じられます。人は仕事を通して成長したいと思っています。それゆえ、成長できることを実感できる職場からは離れようとしません。
ただ、世の中の上司、経営者の多くは、任せることが苦手です。なぜなら、人に任せるよりも自分でやったほうが早いし、失敗もないし、任せると思ったような結果につながらないと思い込んでいるからです。私はこれを「何でも自分でやってしまう病」と呼んでいます。
また、仕事を任せるには、部下の教育をしなければなりません。でも、人手不足の状況下で、上司はプレイングマネジャーとして、自らのノルマをこなすことも課せられています。そうなると、自分のことで手いっぱいとなり、部下に仕事を教えている余裕がない場合もあります。しかし、これではいつまでも部下に仕事を任せることはできないでしょう。
今回は、できるだけ時間を使わずに仕事を任せる方法をご紹介します。
部下に仕事を任せる前に行うべき「2つの準備」
確実に部下に仕事を任せるには二つの準備が必要です。といっても、それぞれ5分程度しかかかりませんので、ぜひ実践してみてください。
(1)任せる相手のタイプを知る
まず、誰にどの業務を任せるのかを決めることです。適性に合った業務を任せれば、生産性も上がりますし、仕事の完成度も上がります。そのために、各自の特性(タイプ)をしっかり把握することが不可欠です。性格、長所、短所、仕事観、人生観、価値観、子ども時代のことや将来のビジョンなどについて知っておけば、コミュニケーションが楽に取れるようにもなり、良い人間関係が築けます。
そのために、今から5分でできる簡単なワークをご紹介します。
あなたの部下の1人を選び、その人のニックネームをノートに書いてみましょう。分からなければスルーでOKです。
次に「得意な仕事、苦手な仕事が何なのか?」「いきいきと仕事に励んでいたのはどんな仕事だったのか?」「どのように褒めれば喜ぶのか?」について、知っていることを書いてみましょう。
他の部下についても同様に分かる項目を書き出してください。もし、ほとんど書くことができなければ、仕事を任せる前に部下のことをもっと知るところから始めましょう。雑談の中でそれとなく聞き出し、少しずつ理解を深めてください。
(2)成長につながると伝える
自分が欲していること、手に入れたいものが得られるとなれば、任された部下は積極的に行動しようと考えるでしょう。したがって、上司は部下に対し、行動することのメリットを感じさせることが有効です。
前述した通り、人は仕事を通じて成長したいと思っています。これは、老若男女すべてに共通して言えることです。そうであれば、「この仕事にしっかり取り組めば成長できる」と部下に伝えることで、任せられた仕事への取り組み方は変わります。また、成長できること以外にもメリットがあれば、具体的に説明しましょう。自分にメリットがあると感じた部下は、「やらされ感」を抱くことなく、やる気をもって仕事に取り組みます。
指示を出すときに注意すべきこと
任せたことが、こちらの意図通りに実行されない場合があります。原因は、任せる内容が部下に正確に伝わっていないことです。
伝えるときに、曖昧な言葉を使って指示を出してはいけません。たとえば商品の発注について、「ちょっと多めに発注しておいてください」と伝えても、部下によって捉え方はさまざまです。
指示を出した側が「10個ほど多く発注してほしい」と思っていたとしても、部下は“ちょっと”と言われたので、3個しか余分に発注しないかもしれません。
その結果、納品されてきた数量を見た上司は、「なんで多めに発注していないんだ!」と雷を落とすことになります。部下としては、指示された通りに発注したのになんで怒られるのかよく分からず、理不尽な思いをします。
この場合、上司の頭の中にある“ちょっと多め”を、具体的な数字で伝えることで、両者に誤差が生じることを避けられます。数字の「10」は誰が見ても「10」です。仕事を任せる内容を伝えるときに曖昧な言葉は使わないようにしましょう。
また、写真、図を使って完成形を見せて「この通りにしてほしい」と伝えれば、写真、図の通りに仕上げてくれます。
私がかつて経営していたセブン‐イレブンのフランチャイズ店では、新規商品が入荷する際、売り場のどこに陳列するのかを売り場担当者が決めていました。ただ、発注した商品は、担当者がシフト入りしているときに入荷するとは限りませんので、陳列場所を図に描いた陳列指示書を活用していました。指示書を見れば、誰でも確実に、任せる側の意図した通りに陳列ができるからです。
また、任せることを伝える際、“ここは正しく理解してもらわないといけない”という重点事項については、伝える前に、「今から大事なことを三つ伝えますね」と“前置きフレーズ”を言ってから伝えます。たった一言付け足すだけで、部下は「漏れのないようにしっかり聞かなければならない」と意識しますので、このフレーズの後で言ったことは正しく伝わります。
仕事を任せた後に行うべき大切なこと
仕事を任せた後は「任せ切る」ことが大切です。上司や経営者は、任せた相手が自分と同じ考えを持ち、同じように行動しないと違和感を抱くものなので、どうしても部下がしていることに口を挟みたくなります。しかし、そこは我慢が必要です。失敗によって大きな損害が出ることが明らかな場合を除き、結果が出るまで静観し、すべて任せ切るようにしましょう。
ただし、放置するということではありません。私がセブン‐イレブンのフランチャイズ店を経営していたときは、商品の発注を担当しているスタッフと、売り上げ動向について、毎日5分で結果検証を行い、次の一手を決めていました。
その場で上司が行うのは、主に任せた仕事に対する部下へのフィードバックです。フィードバックとは、現状をありのまま相手に伝えることです。これにより、部下は自分の行動を客観的に見つめることができるようになります。
部下の行動が任せた側の意図とずれている場合がありますが、その際は、頭ごなしに否定はせずに、まずは部下の意図を聞き出してください。仕事に取り組む際、部下は何らかの意図を持って行動しています。考え方や目指している方向(ゴール)が間違えていれば「教育」が必要ですが、そうでなければ、行動の修正はしません。
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部下の考えを否定して、上司の意見(指示)を伝えてしまうと、次からは自分で考えずに指示待ちのスタンスになるからです。これでは成長は望めませんし、仕事にやりがいを感じなくなります。
任せた後に結果検証を行い、フィードバックを繰り返し行うことで、部下は自ら正解を見つけられるようになり、成果を上げられるようになります。そうすれば、自分で考える力が付き、成長が加速します。
最後にお伝えしたいのは、「誰から任せられたのか?」により、部下のやる気、取り組み方、結果は大きく変わるということです。「この人から任せられたのだから頑張ろう!」と思われることが大切です。そのためには、リスペクトされる上司、経営者になることです。そのような上司、経営者から任せられた仕事であれば、部下は一生懸命に取り組もうと思えるでしょう。